05.ベンタイン市場・やばいよ

2023.3.27

メコン川の旅から戻って、夜のホーチミンに降り立った。ホテルに戻る前に、街の風景を味わいたいと思い、夕食をとることにした。お腹を満たすため、口コミで評判の「Phở Quỳnh」というフォーのお店を探し当てた。

「辛くなくて、子供でも食べられるもの」と店員に伝えると、フォーチンという火を通した牛肉を乗せたフォーと、生の牛肉を乗せたフォーを勧められた。

テーブルにはパクチーやルッコラ、もやしといった具材が置かれており、自分で好きなだけ盛りつけて食べることができた。味は抜群で、多くの人が訪れる人気店の名にふさわしいものだった。また、通りに面しているため、車やバイクが行き交う中で食べることができるのも、ベトナムらしい魅力的な体験だった。

通りの屋台でスルメを見つけ、子供が食べたがったので、少し買ってみることにした。小さいものを指さし、値段を聞いてみると、100k VND(約560円)と言われた。スルメ1枚でこんなに高いのかと一瞬考えたが、子供用だったので深く考えずに支払った。

後でググってみると、大きいサイズで100k VNDであり、小さいものでは50k VND以下が相場だとわかった。彼らはこんなに値段をふっかけてくるものなのだろうか。

夕食を終えた私は、grabに乗って遠くのベンタイン市場へ向かうことに決めた。それはホーチミン最大のマーケットであり、美味しいデザートが食べられるという情報を得ていたからだ。更に、ナイトマーケットが開催されているとのことで、ワクワクしながら市場に到着した。

しかし、現地に着いてみるとナイトマーケットはどこにも見当たらず、ただ日中の市場がゆっくりと静まりかえっているだけだった。コロナ禍でなくなったという話や規模が縮小されたとの噂は聞いていたが、予想外の光景にがっかりした。

そんな時、見つけたのはギリギリで閉店寸前のジュース屋だった。私たちはここでデザートを楽しむことにした。

注文したのは、ベトナムのぜんざいである「チェー」25k VND(約140円)と「サトウキビジュース」15k VND(約84円)だった。チェーも美味しかったが、目の前で潰されたサトウキビから作られたジュースは、驚くほど美味しかった。

子供に「美味しいでしょ?」と尋ねると、「だよね!」と答えが返ってきた。

同時に、子供がジュースをすすり終えてしまった音が響いた。「ずずずっ」という音は、一日の疲れを癒やすほどの爽快感を伝えてくれた。私自身、一口しか飲めなかったが、こんなに体の中から失われた水分を補充するのにぴったりのジュースはないと思った。

翌朝、私たちはブイヴィエン通りの朝食を求めて歩き始めた。

路上には地元の人々が集う小さな店がいくつも並んでいたが、私たちは子供が食べやすいものを探すため、メニューの多いレストランを探し続けた。

そこで私たちは、海鮮レストランの「Lúa Đại Việt Restaurant」という店にたどり着いた。

多くのメニューが並ぶ観光客向けのレストランであった。

私たちは、空芯菜の炒め物、春巻き、朝食プレート、イカリングフライのような料理、エッグコーヒー、そしてジュースを注文した。そして、注文してからすぐに、調理された出来立ての料理が運ばれてきた。

それらを美味しく頂いた私たちだったが、料金を見て驚いた。

総額788k VND(約4400円)であった。

徐々に現地の相場に慣れてきたものの、観光客向けのお店で値段を気にせずに注文すると、日本の外食のような請求書がやってくることになる。朝からこれだけのお金を使ってしまうことに、私は後悔した。

旅行に来た意味を考えると、現地の人たちが集まる店で食事をすることが最高なのだと理解しているが、家族の要望を叶えることと、炎天下の中で店を探すことに苦労してしまっていた。

今日はホーチミンを一日散策し、夕方にはダナンへ向かう飛行機に乗るため、再び市場を訪れた。だが、手元の現金が心配になってきたので、先ずは市場横の両替所へ向かった。

そこには、いきなり現れた靴磨きをしてくる男がいた。

初めは断ろうと思ったが、拒絶してばかりだと旅がつまらなくなると知っていた為、言われるがまま靴を脱いでやってもらう事にした。靴を脱いでいる間、サンダルを履かせられた。家族が私の靴磨きを見てくれている。この時私は両替所に並びながら高くても50kくらいだろうと思っていた。

私は両替を終えた。すると、変なおじいさんが近づいてきた。日本語でレビューが書かれたノートを見せてきて、自分は安全な人だとアピールしてきた。

そのおじいさんが、靴磨きの男を指して「やばいよ」と言うのだ。(出川か笑)

ベトナム人が言う「やばいよ」は本当のやばいという感じがした。

不穏な空気が漂ってきた私は、急いで靴を返してもらおうと靴磨きの金額を聞くと、400k(約2250円)だと言う。スニーカーはたった4000円だったのに、そんな金額は払えない。確かに掃除してもらった上に、白い塗料みたいなのを塗ってもらってかなり綺麗になっているが、それでもそんな高い金額は払えない。

私は100kで交渉したが、靴磨きは受け取らないと主張。私も絶対に譲らないとして、100kを渡して握手を主張した。周りの靴磨きの仲間が笑って私と握手した。そうすると何か伝えられ、靴磨きも100kで諦めてくれた。当初50kくらいかと思っていたがまた出費になってしまった。

再びベンタイン市場に足を踏み入れた私は、昨夜の感動を味わったジュース屋を見つけ出そうと目を光らせた。そして、あの美味しいサトウキビジュースを再び頼むつもりだったが、何故か暑さのせいかビールを手にしていた。

市場の中を歩き回りながら、私は気になるTシャツの店に目を止めた。価格を聞いてみると、なんと1枚500k VND(約2800円)とのこと。私は即座にぼったくりだと確信した。自分が納得のいく価格50kを提示すると、店主は一瞬で断固とした態度をとった。

しかし、私は諦めるつもりはなかった。別の店に行って100k(約560円)で交渉すると、店主は150kと言い返した。子供用だからとお願いしたら100kでOKしてくれた。別の店でさっき100kで買ったと伝えると、私用のTシャツもスムーズに購入できた。

購入がスムーズ過ぎたので、70-80kくらいが相場だったのかもしれない。

しかし、お金に関するトラブルが続いていたところ、靴磨きやTシャツの交渉によって、家族も混ぜて楽しいやりとりを経験することができた。

これで、ちょっとした出費も笑って許せる気がした。

つづく